通信販売酒類販売業免許の限界

インタネットのホームページ上で酒類を通信販売をする場合は、通信販売酒類小売業免許を取得しなければなりません。

この点、一般小売業免許業者であっても、販売場と同一の都道府県内の消費者に対しては通信販売をすることができますが、インターネット上での取引は日本全国の消費者を対象とすると考えられますから、一般小売業免許を使ってインターネットで通信販売をすることは事実上認めらません。

このように、通信販売業免許には幅広い地域の消費者を対象に酒類を販売することができる便利な免許に思えますが、この通信販売免許には大きな制約あります。つまり、通信販売小売業免許で国産酒類を販売する場合は、小規模醸造業者が製造する地酒・限定品(年間の課税移出数量が3000キロリットル未満の国産酒造メーカーが製造・販売する酒類)しか取り扱うことができないのです。

一方輸入酒類についてはこうした制限はありません。

このように、通信販売酒類販売業免許は、国産大手メーカーが製造したビールや清酒等の国産酒を取り扱うことは原則的に認められず、原則として小規模な国内酒造メーカーが作った国産酒と輸入酒のみを販売することが認められています。

こうした規制は、小規模な酒販店を保護するためのものとされています。

すべての酒類を通信販売できる酒類小売業免許の存在

このような規制にかかわらず、大手の小売業者が国産大手メーカが製造したビールや清酒を、インターネット上で通信販売をしているケースをよく見かけます。たとえば、有名デパートのお歳暮や、最近は大手通信販売小売業者のアマゾンが国産大手酒造メーカーの酒類の通信販売を始めました。

このように、国産大手メーカが製造した酒類を合法的に通信販売する手段がないわけではありません。なぜならば、平成元年以前に交付された酒類販売業免許には、一般小売と通信販売小売の区別がないため、古い酒類販売業免許を有していればすべての酒類を通信販売することができるからです。

そして、酒類の通信販売に新規参入した業者であっても、こうした古い免許を受けている酒類販売業者を買収することで、すべての酒類を通信販売することができるようになります。

したがって、こうした古い酒類販売業免許を取得している酒類小売業者は高額な売買の対象となります。

今後の流れ

このように、国産酒類の通信販売には大きな制約がありますが、近年の国内酒類消費量の減少や廉価な大手スーパーによる輸入ビール等の販売の広がりを受けて、現在では酒類小売業に対する規制の緩和の流れが出来ています。以前はあった輸入酒類の通信販売の厳しい規制も、現在では撤廃されています。

また、本来は小規模小売業者を保護するための規制が、結果的に資金が潤沢な大手業者の独占を許す結果となっていることは否めず、こうした事は国税当局も認識しているという話も耳にします。

消費者のニーズの多様化に伴い、現行の通信販売免許を活用して様々な輸入酒類を取り扱うことで営業を軌道を載せることも可能ですから、まずは無理をせずに現行の現行の免許を取得して酒類販売の経験を積みつつ、今後の規制緩和の流れを注視していくことが現実的な方法ではないでしょうか。